今日の勝敗(兄弟げんか解説)
 

 私は一人っ子だから兄弟げんかというものをやったことがないのですが、うちの二人の息子達は、しょっちゅう小競り合いをやっています。上の子が9歳で、下の子が5歳だから、4つも年が離れているのですが、そのわりに、しょっちゅう喧嘩をしています。
原因は取るに足りないことばかり、つまらないことで言い合いになり、そのうちに、最初の原因となったことから話が離れていきます。それで、とにかく何か材料を探しては、相手を非難しあいます。俗に言う「ああ言えば、こう言う」というやつです。横で聞いていて感心するくらい、いろんな"いちゃもん"を付け合います。下の子は年下のくせに結構弁が立つので、上の子は益々「頭にくるなぁもぅ!」ってな具合になり、エキサイトしてきます。ところが、ここで手を出して、乱闘を始めてしまうと、最初の原因がどうであれ、きまって上の子が怒られてしまいます。「弟にどうして、そんな乱暴なことをするの!」というやつです。この場合、いくら下の子が悪いんだ、ということを主張しても、「原因は何であれ、暴力はいけません!」という言葉で締めくくられてしまうので、兄弟げんかは"手を出したら上の負け"という法則があります。上の子はそのことを経験的に知っているので、殴りたい気持ちを必死になって押さえます。必死に我慢しながら「いいかげんにしろよ!!あっち行け!!」みたいな言葉を、せめて声量だけは負けまいと、吐き棄てます。ところが、下の子もまた、"上は手を出せない"という法則を知っているので、調子に乗って"子憎たらしい言葉"を続けたりするのです。下の子は、その辺のツボを良く心得ていて、どんなことを言えば相手が逆上するのか、良くわかっています。相手を挑発し、あくまで乱闘に持ち込もうとします。
まぁ兄弟げんかだから、どっちが悪いということでもないのですが、最終的な"終り方"によってどちらがより優越感を得られるか、微妙に違うものです。うちの場合、上の子がもうちょっと我慢するか、あるいは何を言われようとも無視するなどして、戦いを回避すれば良いのですが、たいがいは下の子の罠にはまって敗戦となっています。
 ところが今日は、言い合いの最中に、あまりのしつこさのために「いい加減にしなさい!」と下の子が怒られました。下の子は、予期せぬ展開となったため、反論の言葉も見つかりません。おそらく心の中では「だって・・・・だって・・・」と繰り返し、なにか反論したかったのだと思います。でも、声に出ない。それで、くやしくて、涙がブワーッと広がってきます。私のほうをチラッと見ましたが、私が助け舟を出すわけもないことを悟ると、お母さんのほうへ視線を戻しました。目を大きく開いて、涙がポロッとこぼれるのを必死に我慢していました。上の子と違い、彼は「人前で涙を見せるのは男の恥だ」と思っているらしく、めったなことでは泣きません。それでも、「今日は泣くだろうな」と私は思ったのですが、結局、お母さんが「早く布団へ行って寝なさい」と言うまでがんばり通しました。それでクルッと方向を変えて布団にもぐりこむと、布団の中で「うぅー・うっうっうっ」と声を殺して泣いていました。「よっ!男だね!」。
 あんまり度々聞かされるとうんざりするけれども、兄弟げんかって、やったことの無い私にはちょっとうらやましい気もします。


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