The Field of dreamsその2
 小俣チームの快進撃

 
 野菜や農業以外の話題を書くと結構反響が大きいので、今週もガキ大将小俣くんと小俣チームの話を・・・。
 小俣くんは本当に典型的な、由緒正しいガキ大将でした。
 小俣チームの練習は、井の頭公園の三角広場や杉並の善福寺川公園のグラウンドなど、色々と場所を変えてやっていました。井の頭公園なら自転車でいける距離ですが、善福寺川公園までは遠いので、子供たちだけでバスに乗って行っていました。今だったら保護者がいなければ絶対に許されないと思いますが、その頃は許されていました。
 バスの中でも小俣くんの一喝で、筋力トレーニングと称して「かかとをつけないで、つま先立ちして目的地まで我慢する」というのをやったり、「つり皮に,どれだけぶらさがっていられるか?」などやらされたのを覚えています。
 それで目的地に到着して、ほかの小学生が先に野球をやっていたら「てめぇら、あっち行けよ!」とけちらすのも彼の仕事でした。小俣くんは上級生とも平気でケンカするタイプだったのです。彼はチーム内のことをすべて勝手に取り仕切る、独裁的な権力を持っていましたが、ただえばっているだけではなくて、練習場所を確保するとか、みんなに気を配るとか、そういったボスらしさを持っていました。だからチームのみんなは、小俣君が、判定が気に入らないと審判に詰め寄って、判定を覆してしまうのも、まぁしょうがないかぁ、と思っていたのだと思います。
ある日、善福寺川公園のグラウンドでいつものように練習していたら、チームメイトのM.Kくんがうんこをもらしてしまうという事件がありました。多分、彼はおなかの調子が悪かったのに「練習サボると2軍に落とされるからぁ」と思ったのでしょう。調子が悪いのに無理をして練習に出てきて、それでこらえきれずにしてしまったのだと思います。それで、みんな「くせぇー」とか言って騒然となり、彼は真っ赤な顔をして、歩いて家に帰ってしまいました。翌日の学校では、当然、その話題でもりあがるところでしたが、朝早くに小俣くんはチームメイト全員のところを回り、襟首を締め上げながら「てめぇ、昨日のことは絶対しゃべるなよ!」「聞かれたら、あれはうんこじゃなかったと言え!」と口止めをして回ったのです。さすが小俣くん。美談ですね。
 別の日には、これは小俣チームの練習中のことではないのですが、学校の校庭でキックベースというサッカーと野球をミックスしたようなゲームをしていました。そうしたら、「たべっち」(田部くん)の蹴ったボールが、校庭の脇の外灯に当たって電灯のガラスが割れて、その大きなガラスの破片が、ちょうどその下で本を読んでいたハカマダフミコちゃんという女の子の頭に突き刺さってしまいました。ガラスの破片がスローモーションで落ちていって、フミコちゃんの頭に当たる光景を、今でもはっきり覚えています。救急車が来て彼女を乗せていってしまいました。(幸い、何針か縫った程度だったのですが)校庭に残った私たちは、大変な事故が起こってしまったと、ショックを受けていました。学校の先生に「君たちはもう家に帰りなさい」と言われたけれども、みんなそのまま、バラバラになって家に帰る気になれず、無言のままトボトボと歩き、いつしか井の頭公園の三角広場に来ていました。夕暮れが迫る中、神田川の川べりに皆で座って、(たぶん石も投げていたと思う)意気消沈していました。すると、たっべっちが「おれ、刑務所に入れられちゃうかな?」と言いました。「刑務所」という言葉に私はドキッしました。そしたら小俣くんが「だいじょうぶだって、心配するな!いいか、もしお前が刑務所に入れられるんなら、俺も一緒に入ってやる!」そう言ったのです。この言葉にはインパクトがあり、私はさらに混乱しました。(刑務所に一緒に入る・・・・そんなことできるんだろうか?・・・でも、小俣くんって、すごい友達思いだなぁ・・・すごい奴だなぁ・・・「だったら僕も一緒に入るよ」と言うべきかな?・・・でも刑務所に入るのは絶対いやだしなぁ・・・それって卑怯者かなぁ・・・)そんな風に頭の中がぐるぐる回ったのを覚えています。それで、結局私は何も言い出せませんでした。

Back