市民の声を反映し『岸辺の雑木林ともども永久保存する』というのが史跡指定合意でしたが、実際の史跡指定されるまでに27年の歳月がかかりました。この長い年月によって、そもそもの目的が薄れ、『樹木が法面に悪影響を与えている』『史跡保存のためには樹木を切らなければならない』という内容の管理計画が策定されてしまいました。
樹木と斜面の関係について、様々な論文を調べてみました。下記はその紹介です。
植生の表面浸食防止機能(北原 曜,2002年)_pdf (jst.go.jp)
概要 樹木や草が風雨のエネルギーを減殺し、落ち葉の堆積は雨のエネルギーの減殺のほか、保温、保湿効果により霜の害、乾燥による風化などを防いでいることが明らかにされてます。裸地の浸食量を1とすると樹林地の浸食量は1/100まで低下することも書かれています。まとめでは『以上の検討を通じて,植生とりわけ森林の表面侵食防止機能が絶大であることが示されたが, 最後に, 森林の表面侵食防止機能は持続的で,しかも時間とともにさらに効果が増すこと,安価であること,他の森林機能と併用できることなど,非の打ち所がないことを指摘しておきたい。』とむすんでいます。
2018年台風24号による玉川上水の樹木への被害状況と今後の管理について(高槻成紀,2020年)_pdf (jst.go.jp)
概要 台風24号で玉川上水では111本の倒木があり、そのうちケヤキは7本、サクラ属は37本だった。倒木のうち植林されたサクラ、ヒノキは平均直径は50センチ以上の大木で、自生のコナラ、クヌギなどは直径30センチ前後だった。
管理する側から『サクラは土手を守り、ケヤキは土手を壊す』という説明を聞くことがありますが、この論文は実際起こった台風による倒木を記録し、それに基づいて考察しています。
関東ロームの切土斜面に侵入,成長した傾斜樹木の引抜き抵抗力 (前田浩之助ほか、2000年)ja (jst.go.jp)
概要 法面に横向きに生えている樹木は見た目は危険に見えるが、引き抜き抵抗力は平地のものより高くなっていたという報告。根元直径が15cm以上になると厳しい生育条件に適応して抵抗力を増大させるものと思われる、とまとめられています。
『緑斜面の健全性診断と再生のための新技術』(新貝文昭,2012年) 083.pdf (jcmanet.or.jp)
概要 天然木には太い直根が2mもあり、植栽木には直根が無かった。 天然木には根のネット構造があり、植栽木には無かった。
同じ樹種でも移植されたものと、発芽した場所で育つ実生木とでは根の構造が大きく違い、強いのは実生木であることは大変興味深い内容です。
『砂流出防止機能の高い森林づくり指針 解説版』(林野庁,2015年)ippan265_11.pdf (maff.go.jp)
概要 根の引き抜き抵抗力を調べるとケヤキが断トツで高い値だった。
ケヤキは古くから鉄道林や屋敷の防風、崖線を守る樹種として使われてきましたが、ケヤキが最強であると証明している資料です。
